都会の中の小さな自然

都会の中の小さな自然

🌿植物と共にある循環する暮らし・・・フィトテラピー 


今日から3月。少しずつ日が長くなってきたのを感じる反面、本格的な春の訪れが待ち遠しいものです。こうして四季の変化を感じ、自然に安らぎを求めるのは、私たちのルーツが自然の中にあるから。田舎の森の中で育った私は、30を過ぎてから益々、幼少期に当たり前だった生活が懐かしくなってきました。オーストリアの首都であるウィーンは東京ほどの大都会ではないものの、人や機械に囲まれた生活が続くと、やはり自然の中に行きたくなります。これは「森林浴」や「フィトテラピー」が心や体に安らぎを当てえてくれるという概念が自分の中にあるからではなく、自分自身が本能として持っている欲求なのではないかと思うのです。さて、今月は私が度々訪れるウィーンの小さな自然を皆さんにご紹介したいと思います。


目覚めの春

春は様々な命の始まりであり、また動植物が活発になりだす季節。暖かくなったり寒くなったりを繰り返しながら、少しずつ気候が安定してきます。



黄色い花を咲かせているのはセイヨウサンシュユ(コーネリアンチェリー)です。夏になると真っ赤なコーヒーの実のような果実をつけます。実はビタミンやミネラルが豊富ですが、酸味が強いためジュースやジャムに加工して食べられます。



鮮やかな宇治色と黄色が美しいのはヨーロッパシジュウカラ。「ピッピッ」という可愛らしい声が森に響き渡ります。音に敏感で、写真を撮ろうと近づくとすぐに逃げてしまいます。



春にウィーンでよく見かけるのがスピノサスモモというバラ科の木。桜にも見えるのですが、スピノサスモモは秋になると黒っぽい実をつけるのが特徴です。


活動の夏

日照時間が長い夏は、動植物が最も活発になる季節。外に出ると緑の爽やかな香りが広がります。



茶色い翅に目玉模様が特徴的なのはマキバジャノメ。翅の表は暗褐色、裏はオレンジ色で、6月から9月によく見られます。暑い夏でも、蝶々を見ると遂立ち止まって目で追いたくなってしまいます。



花の女王でもあるバラは、初夏に見頃を迎えます。雨が降った後のバラもみずみずしくて美しいですね。特に暑い夏には、こういった草木が涼をもたらしてくれます。



植物を食べているのはマガモ。水のある場所ならどこにでも現れます。オレンジ色の足を使って器用に泳ぐマガモですが、潜ることはできず顔だけを水中に突っ込んでエサをとります。夏の暑さが収まってくると、いよいよ秋の始まりです。

 

紅葉の秋

紅葉は四季のある国であればどこでも見られるものですが、ヨーロッパに生息する植物が異なるため、日本の紅葉とはまた違った色合いを楽しめます。



夏が終わり、寂しさに浸っている間もなく植物たちは色づき始めます。秋の始まりにはまだ緑が少し残り、紅葉の本番を楽しみにさせてくれます。


湿った落ち葉は、独特な香りがします。甘いような、土っぽいような。これも秋の森を散歩する楽しみの1つです。



より湿り気のある森へ進むと、きのこを発見。きのこはあまり詳しくないのですが、おそらくナヨタケ科に属するものの1つだと思われます。秋になると木々のある地面に生えてくるキノコで、上から見ると傘にきれいな模様があります。秋も終盤になるとキノコも枯れ、落ち葉と共に微生物によって分解された後、再び木々の栄養になっていきます。そして寒い冬が始まります。


静けさの冬

冬の森はシーンと静まり返り、まるで自分1人しかいないような気持ちになります。



太陽が降り注ぐ日も良いですが、曇り空と雪のコンビネーションも私は好きです。寒い日でも森の中に行くと、木々のお陰で少し暖かいような感じがします。



凍った泉の上を得意げに歩くのはユリカモメ。夏場とは色が変わり、白っぽくなっています。体温調節のために片足立ちをしているユリカモメもよく見られます。



最後にご紹介したいのが、ウィーンの森の賑やかな住人のキタリス。冬毛をまとったキタリスは少しふっくらしていますが、冬の間も1日にわずかな時間のみエサを探しに活動をします。静かな雪のある森でも、耳を澄ますと至る所に登場するのです。ウィーンのキタリスは人間によって餌付けをされているので、歩いていると自ら近づいてくることもあるんですよ。このキタリスこそ、私が森を散歩する楽しみの1つでもあるのです。

こうして春夏秋冬を感じることができるウィーンの森が、私は大好きです。都会にある小さな森の中でこれだけたくさんの動植物に出会えることは、ある意味特別なことかもしれません。そしてこの自然な循環こそ、私たちの暮らしや健康を考える上でも守り続けていかなければならないものだと思います。なぜなら、私たちも自然の一部だからです。


AMPP メディカルフィトテラピスト

Elisabeth.M (プロフィールへ

参考文献

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